概要
ドバイはどんな街?
2009年のドバイ – こんな砂漠に街を作ってうまくいくのか半信半疑

ドバイのシンボル、7つ星ホテルのブルジュ・アル・アラブと人工島パーム・ジュメイラ
2008年に起きた金融危機の影響を最も大きく受けた都市の一つがドバイです。実際、金融危機で多くの外国人投資家が資金難に陥り、ドバイのビル群を建設するための資金を調達できなくなった結果、訪問日時点で多くの工事が止まっていました。
そして、この訪問の4ヶ月後、ドバイ政府は2009年11月24日に実質的に国営の不動産開発会社であるドバイ・ワールドとナキールの債務、約5兆円($59 billion)の支払いを延期するとアナウンスしました。いわゆるドバイショックです。
ドバイショック直前のドバイ不動産を見てきましたのでレポートします。(執筆と再編集は2011年7月です。)
【イスラム教国の中の経済特区】

場所によっては日本人のイメージ通りのイスラム圏みたいなところもあります。
ドバイはUAE(United Arab Emirates)にある都市で、言うまでもなくイスラム教国です。経済よりも家族よりも宗教を優先するのがイスラム教(とサウジ人が言ってました)。少し我々とは考え方が違います。
数えきれないくらいの高層ビル建設が進行中(2009)
【世界に存在する建築用クレーンの1/3もがドバイに集まっている】

もう、目の前の光景なのにリアリティがないくらいに、至る所にビルを建てまくっています。まるでゲームのようです。何もないところからよくもここまで作ったなと。カジノこそありませんが、ラスベガスのようです。

街中に高層ビルが建っていて、どのビルも屋上にクレーンが載っており追加で建設中。豊洲再開発の数十倍の規模はあると思います。

住宅地に人工的にため池を作っている。水が張られる前。このような大規模工事が、ここだけでなくて至る所にあるのが驚きです。

電車(ドバイメトロ)も建設中
http://en.wikipedia.org/wiki/Dubai_Metro
2009年09月09日の開業を目指していましたが、開業日当日にオープンできたのは10駅/全29駅のみで工事は遅れました。工事は日本の大林組ほかが請け負っていましたが、同社は遅延や仕様変更により大きな損失を被っており、このニュースは有名です。「大林組660億円の赤字、ドバイ鉄道で損失(中略)ドバイ政府から駅舎の内外装などの大幅な設計変更を指示された上、資材価格高騰もあり工事費用が大きく膨らんだ。請負契約をめぐり責任範囲などで政府側と見解の相違もあったという。」 2010年3月24日22時23分 日刊スポーツ新聞社

都市部から数十キロ離れたところの発電所。やはり石油を燃やして火力発電でした。
2016年のドバイ – 砂漠から大都市への変貌
訪問日 2016年3月
トップ画像は、お約束のブルジュ・アラブ外観と2Fのカフェ。宿泊もしくはレストランの予約がないと中には入れない。宿泊はスタンダードルームでも現在は20万円前後。
今回は、2回目の訪問ということもあり、写真を中心にして簡単な解説のみ。
ひとことでいうと、現在のドバイは、こういう国だろう。
かつて、石油で蓄財した富。
石油が枯渇したあとは、今まで蓄積した資金を使って大規模な開発を行った。
都市開発のテーマは「世界で一番いいものを集める」だろう。観光収入への依存度が高いので、世界で一番にこだわり、魅力的な街を維持することは重要なのだ。
世界で一番が好きなのはアラブ人権力者の国民性ということもあろう。
そのようにして、自らドバイに魅力付けをする。街が魅力的で人が集まれば都市は発展する。
そうなれば、今までは何もなかったために価値もなかった土地に経済的な価値が発生する。
つまり土地価格が高騰して流動性が生まれるのだ。
その方法で、価値のなかった砂漠の原野を、価値ある開発用地に化けさせた。
自ら街を開発して、一等地の不動産オーナーになり、永続的に賃貸収入を得るビジネスモデルだと考えれば良いだろう。
ドバイはシンガポールに近い収益モデルだと考えることもできる。セーフ・ヘイブンでオフショアであるがゆえに近隣諸国からの投資や逃避を呼び込めている。
しかし、それだけではない。ドバイ自体がひとつの大きな事業体なのだ。主たる事業内容は観光と不動産開発である。
ローカルの人々はそこから上がる利益の分配を受け、何も生産していないにもかかわらず裕福な生活をしている。
そして、2016年現在では、その目論見による変身は概ね成功したといえるだろう。
昨今の原油格暴落により、センチメントに多少の陰りはあろうが、2009年ドバイショックのときのように壊滅的なダメージを受けることは想像できない。
経済的には非常に健全な街に育ったように見える。
2009年訪問時は、ほぼすべてのビルというビルの上にクレーンが載っており建設中だったが、現在では、ブルジュ・カリファからブルジュ・アラブのあたり(中心部)の開発は、8割、9割方完了という雰囲気。
3月の涼しいシーズンということもあり、中国、ロシアほか各国からの観光客も多い。
ドバイでは涼しいことは重要で、夏はテーマパークなども閉鎖していることがある。タクシーも、雨が降る日に「今日は涼しくて良い天気だね」と言っていた。
UAE人は、日本人や先進国の人々が驚くほど、みんな裕福。万国博覧会的なテーマパーク「Global Village」の入口にて。
2019年のドバイ – Changing & Opportunity
他にも数々の中型プロジェクトが進行中。中型といっても日本なら大ニュースになる規模だがドバイは大型が大きすぎて目立たない。
現地の不動産業者がいうには、2019年のドバイは「Changing & Opportunity」の街。「なぜこの街で挑戦しないんだ!所得税もかからない!」とのことで、まったくそんな雰囲気が伝わってくる街である。

ドバイメトロも完成。レッドライン、グリーンライン、ブルーライン、パープルライン、の4路線があり、2013年に一通り完成したが、Expo 2020に向けてNakheel Harbour and Tower駅からExpo会場までを延長工事中。
ドバイで働く外国人の幸せについても考えるようになった Ministry of happiness新設(2019)

現在では、このサイトは、https://www.hw.gov.ae/
National Program for Happiness & Wellbeing にリダイレクトされる。happy.aeは軽すぎたかな!?と変更した(?)
ブルーワーカーの外国人には無料SIMを配布するなど検討している様子。
2020年 ドバイExpo2020
ドバイExpoはGame Changer for Dubaiと言われており、今から楽しみ。
中国人投資家を歓迎するも、そこまで多くない中国人(2019)
中国人投資家はそこまで多くない様子。ドバイのパワーはとてつもなく強力であるため、中国人投資家をもってしてもドバイを占拠することは不可能。ここでは、ゲストとして、一般富裕層の一人としてひっそりと暮らすしかない。

エマール(大手不動産デベロッパー)は中国を歓迎している。
イスラム教(ムスリム)の基本ルール
知り合いのサウジアラビア人に聞いたイスラム教のルール(2009)
ドバイを理解するには、ある程度イスラム教についても知っておく必要があるでしょう。知り合いのサウジアラビア人に聞いたイスラム教のルールをまとめてみました。ドバイでもだいたい同じとのことですが、聞くたびに違うことを言ったりもする(基本的にそういう人たちなのかも!?)ので、信用できる証言なのかどうなのかはいまいち分からないため、参考程度に。
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・ハラールというイスラム法で許された食品だけを食べることができる。 |
中東地域では、飛行機の機内食のメニューにもall meats are prepared according to the Halal method.(すべての肉はお祈り済み(ハラール)です)と書かれています。
ちなみに、私の印象は、フレンドリーな雰囲気の中にも、なんとも言えない緊張感があるのがアラビア人という感じでした。
ハラールではない肉売り場が隔離されている(2019)
ハラールではない人向けの肉売り場は隔離されていて豚肉が売っている。ボタンを押さないと扉が開かない。
ホテルのマッサージも同性同士でなければならない法律あり(2019)
マッサージはお客と施術する人は同性同士でなければならないという法律がある
欧米人も歓迎のイスラム都市(2009)
ドバイは欧米的な街(2009)

ドバイはイスラム圏でも生活スタイルは欧米と同じです。ホテルの部屋にはイスラムでは禁忌のワインがスタンバイ。
ドバイは、飲酒も喫煙もOKという、戒律に厳しいイスラム教国にあって、欧米スタイルの生活様式が許されている都市です。なぜ、ドバイでは欧米スタイルが許されているのでしょうか。
それは、ドバイの経済政策に理由があります。
現在、ドバイでは石油の産出はほとんどありません。そのため、石油依存型の経済から脱却して、中東と北アフリカビジネスの玄関としての地位を確立するための戦略として、1980年代にドバイに経済特区(The Jebel Ali Free Zone)が作られました。いわば中東のシンガポール化を目指していると言って良いでしょう。
最終的には、アメリカのニューヨーク、アジアの東京、ヨーロッパのロンドン、そして中東のドバイ。そのように世界経済を四分したいというのがドバイの経済戦略のゴールなのです。
そして、飲酒も喫煙もできなければ欧米のビジネスマンはやってきませんので、欧米からの投資家を積極的に呼び込むために、欧米スタイルの受け入れは必要不可欠な選択肢だったのです。しかし、完全に欧米スタイルかと言えば、そこまで寛容ではなく、あくまでイスラムのルールが基本となっています。

ショッピングモールの入り口に張ってある注意書き。肌の露出をするな、男女でいちゃいちゃするなと書いてあります。

すべての通信は国営プロキシ経由となり、アダルトコンテンツほかイスラムの教えに反するサイトは閲覧できません。先日まではSNSもだめだったとのことだが、現在はLinkedInとmixiに接続できることを確認。
なお、カジノはありそうですがありません。しかし、秘密カジノがあるという噂も。風俗店舗こそありませんが旧市街のバーに行くと、いろんな国の娼婦がたくさんいるそうです。
UAE人と訴訟になっても勝てるのか(2019)
「裁判所は外国人に対してもフェアだ」(Aziziという不動産業者の担当者)
すでに石油は出ないがお金持ち
日本人が聞いたら驚くような社会福祉の充実ぶり(2009)
大卒公務員の初任給は何もしなくても60万円なのだそうです。UEA 人のほとんどは国営企業で働いています。一方、外国人は建設工事従事者などブルーワーカーが多く、出稼ぎ外国人の月給3万円くらいです。その代わり、寮や 食事などは会社支給なので、給料の多くは国に送金できます。この街では、外国人とUAE人の壁は非常に厚いのです。
ウーバーがレクサス、ベンツで来る(2019)
個人のウーバードライバーはおらず会社として組織的にやっているので、レクサスばかり。
ウーバーも使える現代風で開かれた国というアピールもあるのか。
いまだに不動産は最大の関心事項(2009)
【不動産と求人が関心事項】
http://dubai.dubizzle.com/
http://www.souq.com/
ドバイで流行っているポータルサイトの掲示板を見たところ、一番多いのは住居の売り物件、次が仕事探してます(メイドさんが多い)、自動車の売り物、不動産エージェントの営業職募集という感じでした。人々の関心事のトップはいまだに不動産市況のようです。
ドバイの税
不動産譲渡益課税なし(2009)
・不動産譲渡益課税はなし。
・ただし、transfer(名義変更)登記料が物件価格の2%かかる。
・関税は一律5%。 ただし、アルコール(税率50%)、タバコ(税率100%)は例外。
http://www.jetro.go.jp/world/middle_east/ae/trade_03/
・所得税、法人税ははないが年間固定で80万円~くらいのライセンス料(法人税均等割相当)というのがかります。
宿泊税が高め(2016)
・観光とホテルはドバイの重要な収入ということで、税金のないイメージのドバイにしては高額な徴収をされる。
・宿泊料の20%(Most hotels charge a 20% tax on stays as it is: which is made up of a 10% municipality fee and a 10% service charge.) +AED 20(Tourism Dirhamとよばれる固定金額の税。5星ホテルの場合は20でそれ以下だと少し安くなる)という税がかかる。
・無許可のairbnbは違法となった。Dubai Trade commerce marketing (DTCM) に申請して許可取得が必要。ただし最低20部屋以上運営することが必要など個人や小規模なオペレーターは排除される仕組み(an individual with less than 20 properties in his or her portfolio cannot register)
完全無税から少しずつ税金を取る方向へ動き出す。VAT5%を導入(2019)
・VAT 5%が新規に導入された。消費税を取ってもまだ魅力的な街であるということだろう。
・いまだに給料には税金がかからない。
・ホテルでの飲食に係わる地方税(Minicipal Tax)7%になった。元は10%だったのが下がったらしい。Minicipal Taxは業種により違う様子。
ドバイの銀行と証券会社(2009)
【イスラムの国にも債券はある。ドバイショック直前にも債券の営業は積極的】
National Bank of Dubai(NBD)
(その後、合併と名称変更があり現在はEmirates NBD)

ちょっと写りが悪いですが、旧NBDの本社ビル。
ドバイ投資の第一歩として口座の開設を試みました。リスク許容度が高めになるようにアンケートを回答して、ドバイ株を買いたいと言ったのですが、債券買え、債券買え、債券買え、と強烈に債券をお勧めされてしまいました。
債券市場の下落に危機感があるのかもしれません。もしかしたら国策で債券の販促をしているのかも。 (※この4ヶ月後にドバイショックが発生。今振り返ると債券を売りたがっていた理由も理解できます。)
なお、イスラムでは債券のように利子を取る行為は禁止されていますが、なぜかSukuk(スクーク)という債券同等のものが存在します。http://en.wikipedia.org/wiki/Sukuk
ちなみに強烈にお勧めされた債券は次のようなものでした。利回りは、当時のマーケット状況下でも日本の都銀の劣後債などよりも若干利回りが良いかなという程度で、それほど魅力的とは言えない利回りだった印象です。
| □Aldar(総合建設会社)の普通社債らしきもの http://www.aldar.com/aldar_developments.en クーポン:8.75%、利払い:Semi Annual 現在のイールド:8.75% 通貨:UAEディルハム 償還:2014年□Dubai Holdings(ドバイ版三菱グループ?主要産業なんでもグループ)の社債らしきもの http://en.wikipedia.org/wiki/Dubai_Holding クーポン:1.4%、利払い:Quarterly 現在のイールド:10.3% 通貨:USD 償還:2012年□JAFZA Sukuk(経済特区発行のイスラム版債券) http://en.wikipedia.org/wiki/Jebel_Ali_Free_Zone クーポン:6month EBOR+1.3%(Emirates InterBank Offered Rate) 利払い:Semi Annual 現在のイールド:12.6% 通貨:UAEディルハム 償還:2012年 |
なお、口座の開設は比較的誰でも可能ですが、オンラインバンキングを使うのにUAE契約の携帯電話契約がどうしても必要な仕組みになっているので、とりあえず口座だけ開いて、帰ってきたら日本からネットバンキングというわけにはいきません。
Castody Fee(口座管理料)が残高の0.25%/年とのことで、1000万だと2.5万円。日本に比べれば高いですが、譲渡益課税など他に税金はかからないようです。その後、合併があり、現在はEmiratesNBDとなって、口座管理料も改定されました。2011/02現在では75ディルハム/月くらいの様子 です。
ドバイ人は大企業でも結構いい加減らしく、日本に資料の送付を頼んだら、住所はJapanだけ、それ+氏名と電話番号だけで送ってきたこともありました。そもそも資料を送ってもらうまでに何度も電話しないと動いてくれないなど、日本人嫌われているのか?と思うくらい対応は期待できません。
マックシャラフ証券(MAC Sharaf)
ドバイ株を取り扱う証券会社。日本語の話せる女性営業がいて、電話で一度話した記憶がありますが、2010年7月1日でUAE株関連の業務撤退とのことです。
ドバイの感想(2009)
【また1年後、2年後に経過を見に来たいと思わせる街】

ドバイ市のオフィシャルキャラクター
Surprising Dubaiというドバイの街のテーマどおり、いろいろ驚くことが多い国です。ブルジュ・ドバイで知り合ったエジプト人投資家も、ドバイは世界で一番熱い!!と言っていました。
金融危機の影響をもろに受けていますが、不動産価格は売り出し時よりも現在の中古市場の方がまだ多少高く、不動産エージェントが言うには、旗艦物件はこれ以上値下がりする気はしないとのことです。利回り的にも5%程度で正常。不動産市況に限って言えば、日本で報道されているようなドバイ崩壊、砂上の楼閣というほど大打撃ではないのかもしれません。
個人的には、半ば希望的観測ではありますが、ここまで壮絶な人工物を作ってしまったらtoo big to failだと信じています。 (最近はtoo big to saveとも言うらしいですが) しかし、建物や施設の供給がかなり多い割には、まだ実稼働が半分くらいで、夜になるとビルの明かりが半分も付いていない 場所がたくさんあるのは課題です。さらに内需がほとんどないので、外国人観光客と企業をいかに魅了して集め続けるかが勝負の鍵となるでしょう。







